【仙台】映画館『チネ・ラヴィータ』が3月末で閉館。そうだ、今こそミニシアターへ行こう!
今年1月――。
JR仙台駅東口にある映画館『チネ・ラヴィータ』が3月末で閉館することが発表されました。
2004年の開業以来、多くの方々に親しまれてきたミニシアターが約20年の歴史に幕を下ろします。
悲しみの声が多く挙がっていますが、4月以降は姉妹館『フォーラム仙台』を一部リニューアルするなど、パワーアップして営業していくそう。
そこで今回は、2館を運営する株式会社フォーラム運営委員会から長澤さん(代表取締役)、橋村さん(フォーラム仙台/チネ・ラヴィータ支配人)、鵜飼さん(チネ・ラヴィータ マネージャー)のお三方ご協力のもと、インタビューを敢行。
仙台の映画文化から注目の上映作品まで、貴重なお話をたっぷりと伺いました!
仙台でもっと多くの映画を。
ミニシアターで観る単館系映画の魅力
2館のうち、まず初めにオープンしたのは『フォーラム仙台』。
1999年12月、単館系(アート系)映画の上映が少なかった仙台に誕生した待望の映画館でした。
―フォーラム仙台が開業された経緯について教えてください。
長澤さん:1999年当時、仙台には単館系の映画を上映する専門館がありませんでした。そのため未公開となる映画が多く、仙台の映画ファンは東京に行くしかない状況だったんです。フォーラム仙台を開業することで、仙台市内でより多くの映画が観られる環境を整えたいという思いがありました。
―チネ・ラヴィータについては?
長澤さん:チネ・ラヴィータは、仙台駅東口にあった2スクリーンの映画館「シネアート」を引き継ぐ形で始まりました。椅子を入れ替えたり段差を設けたりして、観やすい環境に改装した後、2004年に開業しました。しかし、入居していたビルが取り壊されることになり、2009年には近隣の商業ビル「BiVi仙台駅東口」に移転して3スクリーンになりました。
―他の映画館とはどんなところが異なりますか?
長澤さん:2館とも3スクリーンのミニシアターで、シネコンとは違って単館系の映画が中心です。「豊かな映画ライフの実現に貢献したい」という思いから、毎年400本以上の上質な映画を上映しています。「映画ファンのための映画館」という経営方針のもと、年間で50本以上の映画をご覧になる方は料金がお得になるプランもあります。チネ・ラヴィータは、震災から数年間、娯楽映画を中心に上映していた時期もあるんですよ。
―では、フォーラム仙台とチネ・ラヴィータにはどんな違いがあるんですか?
長澤さん:フォーラム仙台は本格的で重厚な映画を中心に、アジアの映画などバラエティ豊かなラインナップにしています。一方、チネ・ラヴィータは駅前という立地を生かして、若者向けの映画や娯楽性の高いラインナップを心掛けています。今後はそれぞれの良い所をフォーラム仙台に集約して、お客様に喜ばれる作品を上映していきたいと思っています。
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―単館系(アート系)映画の魅力は何だと思いますか?
長澤さん:単館系の外国映画は、日本にいながら世界中の文化や生活を知ることができるのが魅力だと思います。民族や宗教、風習の違いを超えた人類普遍の感情を共有することで、世界とのつながりを実感できます。あとは、世界中から選りすぐりの映画が集まるので、どの映画もクオリティが高いです。一度味わうと病みつきになってしまう魅力がありますね。
―では、日本映画は?
長澤さん:日本映画の場合は、普段の生活では想像もつかないようなユニークな視点で作られたストーリーだったり、俳優の演技だったりを通して、自分の価値観が揺さぶられて人生に前向きになれるという魅力があります。もちろん商業映画でも同じようなことは起こるんですが、単館系ではその傾向がより強いんじゃないかと思います。
―上映作品はどんな手順で決めているんですか?
長澤さん:映画の配給会社が用意するラインナップに対して、まず先に東京のメイン館での上映が決められます。その後で、地方都市は同時公開なのか、遅れての公開になるのか、作品の規模に応じて配給会社と協議して決めています。日本で公開される映画は年間で1200本を超えるので、すべての映画を上映できるわけではありません。試写を観たり、配給会社と協議したり、お客様のご要望を聞いたりして、上映する映画を選んでいます。
―上映作品を決める際のこだわりなどがあれば教えてください。
長澤さん:まずはお客様が観たい映画を上映するのが基本になります。ただし、映画館のセレクトをお客様に信頼していただけるように、クオリティの高さには一番気を付けていますね。上映時期を自由に決められる作品については、同時に上映される作品に関連性を持たせたり、続けて観ることができるタイムテーブル編成にしたりするなど工夫しています。
2館ができたことで、仙台でも単館系ならではの個性的な作品を映画館で楽しめる機会が増えたんですね!
あなたの人生に映画を。
仙台のミニシアター文化を継承した『チネ・ラヴィータ』
それでは2館のミニシアターについて、詳しくお話を伺ってみましょう。
まずは、2004年開業の『チネ・ラヴィータ』から。
―2004年開業当時の思い出や印象的だった出来事を教えてください。
橋村さん:『チネ・ラヴィータ』が開館したのは、中心市街地から映画館が消えていく時勢の中でした。ですが、仙台のミニシアター文化を担ってきた「シネアート」の場所を引き継いだ経緯もあり、開館当初からたくさんのお客様に迎えられ、支えていただきました。年季が入った映写機材と、2階の映写室から3階のシアターへ大きな鏡を使って投影するというたいへん珍しい劇場構造には、正直苦戦を強いられましたね。
でも、オープンから2か月後にヒット作「誰も知らない」(2004年/是枝裕和監督)の公開に恵まれるなど、非常に幸運なスタートが切れたと思います。劇場のカラーを打ち出すために、当時は特に落ち着いたトーンのアート作品と音楽映画に重点を置いていました。
『チネ・ラヴィータ』は、イタリア語で「映画のある生活」という意味です。その名のとおり、日々の暮らしの中で気軽に映画が楽しめる場所にするために、スタッフ一同、努力と奮闘の毎日でした。
―来館されるお客様はどんな方が多いですか?
鵜飼さん:20代から80代の幅広い年齢層の方にご来場いただいています。男女比も半々くらいです。お一人でいらっしゃるお客様が半分以上ですが、ホラー映画に関しては中学生から大学生のグループでいらっしゃるお客様が多いですよ。
―お客様とのやり取りで印象的だった出来事はありますか?
鵜飼さん:映画の感想をああだこうだとお話ししたり、応援上映のときに一緒に写真を撮ったりしたことは楽しい思い出として残っています。お客様からのリクエスト作品の上映が決まって感謝の言葉をいただいたときはうれしかったですね。
おすすめの上映作品を聞いてみた!
無類の映画好きでもあるお三方。
この機会に、お気に入りの作品について伺ってみました。
―現在、特におすすめの作品は何ですか?
鵜飼さん:現在上映中の作品では「梟 -フクロウ-」(アン・テジン監督)という韓国映画がおすすめです。17世紀の李氏朝鮮時代、ある宮廷に仕える盲目の鍼医・ギョンスが世子暗殺事件を“目撃”し、権力闘争に巻き込まれていきます。思わず息を吞むハラハラドキドキな展開で、ストーリーに引き込まれます。
鵜飼さん:今後の上映予定作品では、3/1(金)より公開されるリリー・フランキー主演の「コットンテール」(パトリック・ディキンソン監督)がおすすめです。亡き妻の遺言に書かれた願いを叶えるべくイギリスへと向かう旅の中で、残された家族が自らを振り返り再生していく、切なくもあたたかい物語です。また、90年代を代表する傑作ロード・ムービー「テルマ&ルイーズ」(1991年/リドリー・スコット監督)も3/1(金)から公開です。監督自らが4K修復に関わっていて、映画ファンには楽しみなリバイバル上映です。
―では、過去の上映作品でおすすめは?
鵜飼さん:沢山ありすぎて選ぶのが難しいですが、、「リコリス・ピザ」(2021年/ポール・トーマス・アンダーソン監督)は、スタッフのリピート鑑賞が特に多い作品でした。1970年代のアメリカ、サンフェルナンド・バレーを舞台に繰り広げられる青春物語なんですが、ストーリー、キャスト、音楽、雰囲気全てが揃った最高の作品でした。
鵜飼さん:あとは、グザヴィエ・ドラン監督〈「わたしはロランス」(2012年)など〉や、ショーン・ベイカー監督〈「フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法」(2017年)など〉、今泉力哉監督〈「サッドティー」(2013年)など〉の作品に出会えたことも本当に感謝しています。まだまだありますが、挙げるときりがないのでこのあたりで止めておきます(笑)。
さすが鵜飼さん!おすすめ作品をたくさん挙げてくれました。
みなさんも鑑賞する作品選びの参考にしてみて。
思い出の詰まった『チネ・ラヴィータ』が3月末閉館へ
―閉館が決まったときにはどんなことを感じましたか?
鵜飼さん:数週間は落ち込みましたね。でも、経営の立場になって考えれば期限付きの賃貸借契約である以上、ちょうど映写機や空調設備などの入替時期でもあったので、このタイミングでフォーラム仙台に集約するのは理にかなっていると思い直しました。
―閉館のニュースに対して、お客様から反応はありましたか?
鵜飼さん:お客様からは、「本当に残念です」「残ってほしい」という声が毎日あります。
閉館を惜しむ声に応え・・・
3月はクロージング特別企画を開催!
3月は、楽しみな特集上映が盛り沢山!
3/1(金)~3/7(木)
〈応援上映で盛り上がった作品特集〉
●「ボヘミアン・ラプソディ」(2018年/ブライアン・シンガー監督)
●「劇場版 美しい彼~eternal~」(2023年/酒井麻衣監督)
3/1(金)~3/14(木)
〈デヴィッド・バーン特集〉
●「アメリカン・ユートピア」(2020年/スパイク・リー監督)
●「ストップ・メイキング・センス 4Kレストア」(1985年/ジョナサン・デミ監督)
3/15(金)~3/31(日)
〈S・S・ラージャマウリ監督特集〉
●「マッキー/Makkhi」(2013年)
●「バーフバリ 伝説誕生 完全版」(2015年)
●「バーフバリ 王の凱旋 完全版」(2017年)
●「RRR」(2022年)
3/15(金)~3/31(日)
〈ゾンビ映画特集〉
●「デッド・ドント・ダイ」(2019年/ジム・ジャームッシュ監督)
●「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(1968年/ジョージ・A・ロメロ監督)
●「新感染 ファイナル・エクスプレス」(2016年/ヨン・サンホ監督)
往年の名作から記憶に新しい話題作まで、バラエティ豊かなラインナップ。気になる作品をぜひチェックしてみて。
姉妹館『フォーラム仙台』の魅力とは?
続いては、姉妹館である『フォーラム仙台』について。
―1999年開業当時の思い出や印象的だった出来事はありますか?
橋村さん:なかなかオープンの日が決まらず、上映作品の選定と告知に苦労した思い出があります。当時、仙台市内では韓国映画や台湾映画といったアジア映画がほとんど観られない状況だったんですが、オープンしてすぐに「シュリ」(2000年/カン・ジェギュ監督)が公開になり、韓国映画のブームが起きたのが印象深いです。
また、当時は仙台市内では夜18時台が最終上映回という映画館がほとんどでしたが、レイトショーで上映した「バッファロー’66」(1998年/ヴィンセント・ギャロ監督)が連日満席になるなど大盛況でした。おしゃれな若者たちのたまり場のようになっていたのが懐かしいです。
―来館されるお客様はどんな方が多いですか?
橋村さん:チネ・ラヴィータと同じく、20代から80代まで幅広い年齢層の方にご来場いただいています。男女比も半々くらいで、お一人でいらっしゃる方が半分以上。年間100本以上の作品をご鑑賞される、コアな映画ファンの方が半数以上いらっしゃいます。
『フォーラム仙台』のココがおすすめ!
20年以上の歴史の中で、映画ファンに愛されてきた『フォーラム仙台』。これから初めて行ってみたいけれどちょっぴり不安…という方のために、ポイントを改めてチェック!
―『フォーラム仙台』は、近くにすてきなスポットが多いのも魅力ですよね。
橋村さん:南へ歩いて5分、10分で国分町や勾当台公園、一番町も15分ほどで行けますね。北方面には徒歩15分ほどで伊達政宗を祀った青葉神社があります。また、北隣にある「喫茶ビジュゥ」は、映画好きのマスターが映画のコラボスイーツなどをメニューに取り入れてくれています。
近隣には、樹木希林さんが絶賛された「大黒寿司」、タイ料理の「サバイサバイ」、スラブ料理の「ノーヴィンカ」など多国籍料理が楽しめるお店が集まっていますよ。韓国食材スーパー「PS.DON DON PARK」でのお買い物もおすすめです!
―上映中の作品で特に人気なのは?
橋村さん:ヴィム・ヴェンダース監督が役所広司を主演に迎え、東京で撮影した「PARFECT DAYS」、ギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモス監督の究極のフェミニズム映画にして問題作「哀れなるものたち」が大ヒット上映中です。
―では、これから公開の注目作品はありますか?
橋村さん:「標的の村」(2012年)、「沖縄スパイ戦史」(2018年)を手掛けた三上智恵監督6年ぶりの新作「戦雲(いくさふむ)」、宮城県出身の若松孝二監督が名古屋に映画館・シネマスコーレをオープンさせた当時の物語「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」、「ドライブ・マイ・カー」(2021年)、「偶然と想像」(2021年)の濱口竜介監督最新作「悪は存在しない」が公開予定です。
単館系だけではなく、いわゆるメジャー作品も含めた多彩な映画が上映される『フォーラム仙台』。
まずはメジャー作品から挑戦してみるのも良いですね。
鑑賞後には近くのお店で余韻に浸る…という贅沢な時間も過ごせそう。
気になる今後の展開
特別企画の開催予定も!
―今後は『フォーラム仙台』に営業が集約されるんですよね。
長澤さん:『チネ・ラヴィータ』のフード&ドリンク販売サービスと、評判の良かった音響設備を『フォーラム仙台』に移設します。映画、宣伝、サービス、スタッフすべてが集約されますので、これまでよりもさらに良い映画館になれるように努力して、仙台市内の単館系映画を盛り上げていきたいと考えています。『チネ・ラヴィータ』に通われていたお客様にはご不便をおかけしてしまいますが、ぜひ『フォーラム仙台』もご利用いただければと思います。
そして、さまざまな特集上映も企画されているそう!
〈ジョニー・トー監督特集【漢の絆】〉
●「ブレイキング・ニュース」(2005年)
●「エレクション 黒社会」(2005年)
●「エレクション 死の報復」(2006年)
●「エグザイル 絆」(2006年)
〈カール・テオドア・ドライヤー監督特集〉
●「ミカエル」(1924年)
●「あるじ」(1925年)
●「吸血鬼」(1932年)
●「裁かるゝジャンヌ」(1928年)
●「怒りの日」(1943年)
●「ゲアトルーズ」(1964年)
●「奇跡」(1955年)
〈坂本龍一没後1年〉
●「ラストエンペラー」(1987年)
●「戦場のメリークリスマス」(1983年)
〈ロッタちゃんシリーズ〉
●「ロッタちゃん、はじめてのおつかい」(1993年)
●「ロッタちゃんと赤いじてんしゃ」(1992年)
〈トーク・イベント情報〉
●3/3(日)吉岡和弘弁護士
『「生きる」 大川小学校津波裁判を闘った人たち』(2023年)
●3/3(日)草野なつか監督
「王国(あるいはその家について)」(2019年)
●3月下旬予定 井上淳一監督
『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』
今後もどんどん盛り上がっていく『フォーラム仙台』にぜひご注目!
―最後に、オーレWeb読者にメッセージをお願いします!
長澤さん:単館系の映画に興味を持ってくれた方がいれば、ぜひ一度、体験していただけたらうれしいです。きっと非日常のワクワクする時間を過ごすことができると思います。ご来館を心よりお待ちしております!
いかがでしたか?
今回は、仙台の映画文化の歴史が垣間見えるインタビュー企画をお送りしました。
こだわりの作品を上映するミニシアターだからこそ出会える作品や、感じられる感動がきっとあるはず。
この機会にぜひ、ミニシアターの魅力を体感してみてください!
フォーラム仙台
〒980-0801 宮城県仙台市青葉区木町通2-1-33
[電話番号]022-728-7866
[座席数]スクリーン1:40席、スクリーン2:56席、スクリーン3:96席(別途車椅子各1席)
チネ・ラヴィータ
〒983-0852 宮城県仙台市宮城野区榴岡2-1-25 BiVi仙台駅東口2F
[電話番号]022-299-5555
[座席数]スクリーン1:63席、スクリーン2:63席、スクリーン3:82席(別途車椅子各1席)
フォーラム仙台/チネ・ラヴィータ
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