いつから始める?どう勉強する?
プロに聞く!公立中高一貫校受検
「わが子の中学受検に関心があるけれど、いつからどのような勉強をすればいいか分からない」という保護者の方も多いのでは。そこで今回は、進学プラザグループ宮城ブロック責任者・阿部智則さんに、公立中高一貫校の特色や、受検を取り巻く現状と対策について聞きました。


特色ある教育と進学実績
令和3年度公立中高一貫校の入学者選抜が1月9日㈯に行われ、今年も多くの小6生が難関に挑みました。仙台市にある仙台二華中学校(以下、二華中)は3.86倍、仙台青陵中等教育学校(以下、青陵中)は1.84倍と、新型コロナの影響もあって例年より下がったものの依然高い倍率で、人気のほどを示しました。

中高一貫校はその名の通り中学・高校6年間の一貫教育を行う学校で、二華中は高校入学時にも生徒を募集する「併設型」、青陵中は中学入学時の生徒数のまま6年間学ぶ「完全一貫型」です。高校受験がなくカリキュラムに余裕があるため、特色ある取り組みを行っていることが人気の理由の一つ。二華中で力を入れているのは英語教育や、グローバルに活躍する人材の育成を目指す実践的な総合学習。青陵中では少人数制できめ細かな学習や進路指導を行い、体験を重視した独自の科目を開設しています。両校とも東京大、東北大、医学部など、難関大への合格実績が高いのも特徴的です。
総合的な力を問う
気になる選抜方法は、筆記試験と作文、面接、志願理由書、調査書により合否を決定します。筆記試験は科目を限定しない「総合問題」で、社会の出来事や統計資料などを素材にして総合的な力を問うもの。選択式も記述式もあります。「すべて教科書の範囲内。特別な知識は必要ありません」と阿部さん。「ただし、知識を詰め込んだだけでは解けない設問が出されます」。試されるのは、問題を読んで理解し自ら答えを導きだす力です。また、令和4年度からは英語の出題も始まります。
作文も重要な要素。学校ごとに傾向があり、与えられたテーマについて自分の体験に基づいて考えを述べる出題や、長文を読み取って要約し意見を述べる出題があります。いずれも、400~500字の文章を段落に分けて論理的に書く力が必要です。

対策は学校の授業を徹底理解
公立中高一貫校への合格を目指すにはどのような勉強をすればいいのでしょうか。阿部さんは「教科書と学校の授業が最も重要」と繰り返します。主要4教科以外の内容から出題されることも。授業に集中し、教科書の隅々までよく読んでしっかり理解することが大切です。差が付きやすい算数や、受検での重要性が増している読解力のトレーニングは特に力を入れて。学校のテストは解きやすい問題が多いので、問題集などで難問にも慣れましょう。「分からない」こそ学力アップのチャンス。できない問題を解き明かすのが勉強の本質であり、面白みです。
受検には一見無関係に思えますが、好奇心を広げ、興味のある物事を掘り下げる体験も大切です。「好きなことに没頭し、とことん追求できるのは、時間がたっぷりある小学生の特権。インターネットは便利ですが、自ら図書館や博物館に足を運ぶ『体験』もしてほしい。必ず糧になりますよ」。
また高校・大学受験と比べて家庭学習が大きなウエイトを占める中学受検は、保護者の伴走が大きく物を言います。健康管理や食事面のサポートの他、一緒に学習計画を立てたり、時には息抜きに誘ったりして「ともに闘う気持ちで臨んでほしい」と話します。
受検することに意味がある
宮城の公立中高一貫校は倍率が高く、努力が必ずしも報われるとは限りません。しかし阿部さんは「受検勉強自体に大きな意味がある」と断言します。近年、高校・大学入試で思考力や表現力が求められ、今年始まった大学入学共通テストでも資料を読み取る問題が多く出されましたが、これらを先んじて重視していたのが中学入試。中高一貫校を目指して勉強することで、自然に将来の高校・大学受験に役立つ力を培えるのです。阿部さんは実際に、二華中受検に不合格だったことで奮起し、後に東大や東北大に合格した生徒を数多く見てきているそう。
無理なく学習習慣を身に付け、思考力や表現力を習得して中学受検に臨むには、小4や小5からのスタートが理想的。この春、お子さんに合った学習を始めてみませんか。