ワインとともに 愛ある時間を【赤白ライフ】

赤白(あかしろ)はおめでたい色の象徴、そしてワインのカテゴリー。ワインと恋愛をコンセプトにしてポジティヴに恋愛や人生を捉え、毎回ちょっと深イイはなしをおりこみながら、ワインを紹介。ワインは種類も多く、自分でセレクトして飲むだけでは至極の一本になかなか出会えません。
恋愛や人生という普遍のテーマでワインとともに過ごす愛ある時間を提案いたします。

【30】見えない運命の糸

「恋で死ぬのは映画の中だけ」
ノルマンディーの軍港シェルブールで、17歳の雨傘店の娘ジュヌヴィエーヴと20歳の自動車整備士ギィは将来を誓い合いますが、戦争のために二人は引き裂かれ別れ、やがてそれぞれの伴侶を得てそれぞれの人生を歩みだします…

1964年公開のフランス映画「シェルブールの雨傘」のストーリー…監督・脚本のジャック・ドゥミと音楽のミシェル・ルグランが創り出した世界は、美しく、切なく、儚く…夢のような色づかいと旋律に圧倒されてしまいます。
「恋で死ぬのは映画のなかだけ」と、ジュヌヴィエーヴに母エムリが語るありきたりの人生の現実と、この映画が放つ映像と音楽の夢のような世界、との間にできたギャップに完璧にやられてしまいます。
「彼のためなら死んでもいいと思った私なのに、なぜ死んでしまわなかったの」と嘆くジュヌヴィエーヴは、愛という儚い本質を運命の中で知るのです。

【30】見えない運命の糸

サヴォイア家という一族をご存知でしょうか?
現在のフランス南西部、ヨーロッパ最高峰モンブランを囲むようにフランスとスイス、イタリアにまたがる地域を11世紀の前半頃から支配した貴族でした。
やがて現在のイタリアのトリノを都として勢力を拡大し、群雄割拠するイタリア半島の中にあって遂には1860年にイタリア統一を果たしイタリア王国を成立させ、王家となった一族なのです。

しかし、第二次世界大戦後の1946年、イタリア国内において王制の是非を問う国民投票が行われ、王制廃止、共和制樹立が決定。一族は国外追放され2002年までイタリアの憲法によって帰国すら許されなかったのです。ロンドンのサヴォイホテルやパリ郊外のサヴォア邸は、この一族の名残なのです。

現在、フランス東部の一部のみがサヴォア地方と呼ばれ、山間にあってひっそりと人々は暮らしています。
フランスとイタリアにまたがる地域のためか、イタリア料理にも合う準イタリアのような印象のワインをつくる地域なのです。

身体障害者の児童養護施設で働いていたジャック・マイエは、ある時「自然派ワイン」に出会い、ワインづくりという糸に導かれてしまいます。仕事を辞めて畑を買い求め、バイオダイナミック農法という徹底的な自然農法を取り入れ、ワインを造り始めました。
とても日当たりの良いこの南西向きの畑の土壌はモラッセ(泥灰岩や砂岩が堆積したものが大半で、粘土を多く含まない土壌)と呼ばれ、良く熟したブドウが実り、それは軽やかなのに複雑で旨みが効いた運命のワインを造りだします。

映画「シェルブールの雨傘」の冒頭、ギィが整備工場で生き生きと働く姿が描かれていますが、その工場の奥にはベンツが停車しています。その脇には黒のスーツと帽子の紳士が…ジュヌヴィエーヴの夫となるカサールの姿が暗示されているのです。運命の糸は決して見えない、けれども導かれてしまうのです。

Le p'tit Canon

雨に濡れるシェルブールの石畳を行きかう色とりどりの雨傘の冒頭シーンから、エピローグの雪の給油所での再会と別れのシーンまでを一気に観ながら、このワインのチャーミングで可憐に白い花の香る味わいを感じましょう。
ジュヌヴィエーヴ役のカトリーヌ・ドヌーブのフランス人形のような美しく「可愛い彼女」に魅了されながら…。

profile

鳥居 創太
鳥居 創太

仙台市出身。学生時代、登山や冒険という名の旅を重ねる。ヒマラヤやヨーロッパアルプスでの登山、アメリカのヨセミテでのビッグウォールクライミング、グリーンランドでは単身世界最北の村で犬ぞりを学び、中東の紛争地も巡る。旅先でのワインやコーヒーなどの農産物との出会い…感動や驚きが尽きないその物語性に魅了され、そこに関わるビジネスでに自らの旅に出ようと決心。大学卒業後は登山関係の仕事を経てバーやカフェ、レストランなどで働く。仙台のイタリア料理店「francesca(フランチェスカ)」にて2007年のオープンよりワインやコーヒーのサービスを行う。2010年、スペシャルティコーヒーの焙煎を始める。先進国で造るワインと発展途上国で造るコーヒー…歴史や民族性を反映したその物語の奥深さに心奪われ、好奇心は止まらない。


■francesca(フランチェスカ)
フランチェスカ

Lunch/11:30〜13:00(L.O.)
Dinner/17:30〜21:00(L.O.)

定休日/毎週月曜日

☎022(223)8216

仙台市青葉区大町2丁目5-3
コーポラティブハウス大町202号

ホームページ

francesca(フランチェスカ)は、できたて、焼きたての美味しさをそのまま、やさしいイタリアンの店。手間を惜しまず必要以上に手を加えません。 素材の個性を限界まで引き出し、化学的なものは使用しないで可能な限り自然な料理を心掛け、愛情を込めて丁寧に。オープンキッチンだから全てが手に取るように見え、安心、楽しい、嬉しい、そんな時間を過ごせる店です。


■staffs

●text work/鳥居創太 & みふひれい ●text e.s./八木かすみ
●photograph/桜是三 ●cooperation shop/フランチェスカ

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